24時間金田一耕助

 5月25日は、横溝正史の誕生日らしく、また今年が「生誕100年」に当たることから(亡くなったのは10年くらい前だったと思う)、日本映画専門チャンネルでは、その日「24時間金田一耕助」なる特集を組む。折しも、当月は「市川崑特集」月間で、月初から新旧「ビルマの竪琴」や「東京オリンピック」、また石坂浩二主演の「金田一耕助シリーズ」もリピート放送されている。
 そもそも最初にテレビで見たときは小学校高学年くらいだったと思うが、「犬神家の一族」の菊人形、「獄門島」の逆さ吊り、「病院坂の首縊りの家」の風鈴などのインパクトが強かったことだけは覚えている。その後、5作品とも何年かにいっぺんくらいで放送があったが、最後に見たのは結構前のような気がする。それで、表紙のおどろおどろしい角川文庫版などを何冊か読み、関連書籍で最初の作品が「犬神家~」で、金田一耕助が手がけた最初の事件が「本陣殺人事件」、最後の事件が「病院坂~」だったと記憶している。
 その石坂浩二主演の5作品が発表された当時、1970年代は横溝正史ブームであり、テレビでも1時間枠で「横溝正史アワー」といった、2~3回程度で1エピソードを描いていくドラマシリーズがあったそうだ(確かファミリー劇場あたりで1~2年ほど前放送していたと思う)。
 また、東宝以外にも松竹や大映あたりの映画もあったし(西田敏行や渥美清も金田一を演じていた)、その後角川映画で「悪霊島」や「八墓村」も映画化された。テレビでも古谷一行、片岡鶴太郎などの主演で2時間ドラマが制作されている(少し調べようと思ったら「邦画データベース」がつぶれていた…。使いやすかったのと、拙作データベースの設計はあそこを習ったものだったので、ちょっとショック)。
 さて、ずいぶん久しぶり(「犬神家~」は昨冬、その前となると5年近く前にNHK-BSで「病院坂~」見て以来)に見ることになったが、「まぁこんなものだったかいな」というのが正直なところ。大筋は覚えていたが、細かいシーンは全然記憶になかった部分もある。
 日本映画のダメなところと思うのは、圧倒的に気軽に見られるテレビで放送されたときに、「2時間に押さえるために」カットされたり、「4:3に収めるために」トリミングが変更されていることだとつくづく思う。金田一シリーズも例に漏れず、データを見ると140分前後になっているが、最初に見たときは確か2時間枠だったような気がする。明らかに初めてみるシーンがいくつかあった。逆に以前見た記憶のあるシーンがすっ飛ばされていたりもした。「悪魔の手毬歌」の中で、金田一が宿泊した宿の女将がびっこを引いていて、それを金田一がたずねるようなシーンがあったのだが、今回見た限りでは無かった。CSなのに。逆に「獄門島」では、最後の独白シーンで「この島の人間は狂っている」と連呼する部分や、「病院坂~」で「開きめくら」というせりふも出てくる。
 地上波では、「放送禁止用語がある」とシーンをカットするか、面倒だから作品自体を取り扱わなくなってきている(「座頭市」が放送されないのは、その最たるもの)。垂れ流しの地上波放送ではなく、意識して加入して見ている有料チャンネルでは、その旨の「お断り」を入れて放送するケースも過去あったし、逆に気にしなければ気になるような部分でも無いため、そのまま放送するのが圧倒的である。過去の作品に対して、後世から手を加えるというのはどうかと思っているし、回避するなら放送の冒頭にでも「これから放送する作品が作られた当時と現在では社会情勢が違い、一部不適切な表現がありますが、作品を尊重し、編集をせず放送いたします。ご了承ください」とでも入れておけばいいだけと思うのだが、いかがだろうか(と思ったら「病院坂−」や「金田一耕助の冒険」には、「作者及び原作者、制作者の意図を尊重し、オリジナルのまま放送しております」と入っていた)。