追悼・ボイスアニメージュ

 1994年冬の創刊から足かけ8年刊行していた徳間書店「ボイスアニメージュ」(以下、VA)が、今月売りの42号で休刊となった。7年数ヶ月前、「声優グランプリ」(以下、声グラ)もほぼ同時期に創刊され、「やっと声優ファンも認知されるようになったか」とある種、感慨深かったのが思い出される。ついでに、それを買ってから同人誌の原稿を切り張りしていたのも思い出された。
 創刊当初は、どちらも季刊ベース(一応)で、VAはvol.3から、声グラはvol.10から隔月刊になっている。VA創刊号は、ハミングバードの5人(三石琴乃、椎名へきる、草地章江、天野由梨、玉川紗己子)が白の衣装でそろえた写真で、声グラ創刊号は、井上喜久子と國府田マリ子が同じく白のドレスとティアラの写真だった(余談だが「hm3」の創刊号も國府田マリ子で、こちらは黒っぽい衣装だったと思う)。VAは、第1期(vol.1~2)はAB判の背綴じ、第2期(vol.3~5)はA4判の中綴じ、第3期(vol.6~42)はA4判の背綴じとなっている。声グラは当初からA4判の背綴じとなっている。
 まぁ、セグメントとしては狭いマーケットで、ほぼ同時期(たしか2週間も違わないはず)に創刊された2誌は、比較されることが多かったと思う。テレバイダーの「流行」コーナーにも取り上げられることができるくらいに。しかし、スタンスとしては、VAは文字通り「アニメージュ」の姉妹誌で「アニメ雑誌の延長線上の声優雑誌」、声グラは「グラビア雑誌の形態の声優雑誌」と幾分違っていたため、それなりに存在意義はあった。ちなみに「hm3」は、当初から声優の音楽面をフィーチャーしたスタンスであり、これまたドメインがかぶらないのである。
 で、だ。このパワーバランスが崩れたのが、2000年10月の声グラ月刊化であろう。ただ、月刊化は要因の一つではあるが、原因ではない。というのも、すでにこの何年か前から「どちらを見ても載っているのは同じ」という現象がおこりつつあった。また、載る人の固定化もおこってくる。いくら切り口が違うと言っても、同じ素材を使っていれば、それなりに似てくるのはしょうがないだろうが。
 また、雑誌自体のマンネリ化(先ほどの載っている人の固定化)により、売れ行きが悪くなってくると当然コストの削減が行われる。つまり、表紙やグラビアページの写真を、従来は声優をブッキングし、スタジオやロケハンで撮影していた物が、レーベルや番組の宣材やジャケットなどを借りて使うようになったのだ(全部が全部ではないが)。そうなると、より「どれを見ても同じ写真」という現象になっていく。
 もっとも、インタビューテキストで差別化して行ければいいのだが、プロダクションチェックが入り、面白い部分、パーソナリティの出ている部分が、場合によってはカットされることもある。結局、掲載文章はかなりフルイにかけれられていると思った方がいい。
 「ネットの方が情報早いから」というのも、直接の原因ではないように思う。10年近く前にも東京BBSやニフティの声優フォーラムあたりでは、個別声優をフィーチャーした板はあったし、また草の根でも「あっぷるはうす」といった声優専門のBBSはあった。声優同人誌でも、ML主宰のタイプが94~95年あたりには存在していた。それでも、インターネットの入りやすさから、情報伝播という意味では、「紙よりweb」にシフトしていくのは主流かもしれない。事実、声グラはキャラアニ.comと提携して情報を出しているし。両方のメディア制作に携わっていた者としては、紙としてのメリットは、受け手側の「蓄積性」と送り手側の「利益が読みやすい」くらいしか思いつかない。
 ただ、webの場合、利益を出すのは異常に難しく、いきおい「担当者は2人で、取材はデジカメ。写真チェックもその場で」みたいなローコスト運用を強いられているケースはすでに珍しいものではない(「デジカメの2インチに満たない画面で、撮了後に本人に見てもらってチェック受けてその日に上げる」なんてのは、多くなってきていて、ここ1年ほどで結構見かけた)。むしろ、送り手も受け手も「それでよし」になっている気がしている。
 その点、VAは、ちゃんと作っていた感が出ていて好感が持てた。これは、スタート地点が「出版社」だから、さっきのようなローコスト運用ではなかったからかもしれない(声グラがローコスト運用と言っているわけではなく、webメディアと紙メディアの差と思う)。牛丼ではないが、「早く」(情報の即時性)、「安く」(購読料)、「いいもの」(情報の密度、テキストの内容、独自性)ならばベストなのだが、紙の場合、現状ではどうしても「いいもの」しか優位性は無く、それが今回の休刊という事になったのだと思う。おそらく現場レベルでは「ウチもwebやりましょうよ」とか「季刊に戻してじっくりやりましょう」とかの意見も出ただろうが、いかんせん徳間書店だからなぁ。「映画の利益を出版で食い潰す」と昔から言われてたしなぁ。